情報システム担当役員とCIOの違い

 私自身30年前のMS-DOS+netware+dbaseⅢからoracle+perl、oracle+C、sqlserver+Visualbasicまで様々なシステム開発をやってきたので、いろんな会社の情報システム担当役員・CIOとの接点がそれなりにあった。最近も元情報システム担当役員だったという方と話していて、なるほどそうなのか、と思ったことがあったので書き留めておくことにした。

 件の元情報システム担当役員の方は、「役員になってから、総務・人事や情報システムを担当して」「ITのことは全く分からなかったが、現状把握をしてきちんと目標設定したので、障害率が下がり、生産性も上がった」と仰っていた。社名は伏せるが、有名大企業の方なので、もちろんマネジメントの能力には充分なものがあったのだろうと思うが、「ITのことを全くわからない」情報システム担当役員というものが、昔と同じようにまだまだ多いんだろうなあ、と素直に思ったわけである。

 ただ、こうしたことは日本の大企業ではよくあることで、IPAのIT人材白書2017のp.97のコラムでも「米国では(CIOが)『いる』と回答した割合が73%、『いない』が27%である。日本では『いる』が27%、『いない』が73%となっている」とあり、日本には情報システム担当役員はいても、CIOはあまりいない、というのが常識になっている。ただ、情報システム担当役員がいない、という大企業は皆無だろう。

 では、情報システム担当役員とCIOの違いはなんなのだろうか。簡単に言えば、情報システム担当役員とはITの専門性がない場合、CIOとはITの専門性がある場合と言って良いと思う。また、正確に言えば、ここにマネジメント能力の有無が追加されて4区分になる。

 CIOとは、本来ITの専門性とマネジメントの専門性を兼ね備えた人材のはずだが、専門性に欠けた実質的には情報システム担当役員でしかない名ばかりのCIOも少なくない。それは日本の人事制度、キャリアパスが専門性をかなり軽視していることが原因だろう。生産技術や研究開発といった専門性は認められていても一般企業でITの高度な専門性が認められているケースはほとんどない。一方、大手のSIerやネット系企業等ではそれなりにITの専門性は認められているが、旧来型の大手企業との風土の違いはいかんともしがたく人材の流動性も高まらない。これが、日本でIT技術者が一般企業にいなくて、SIerを中心とするシステム開発会社に偏在している理由でもある。

 また、マネジメントの専門性はあるがITの専門性には欠ける情報システム担当役員Aならまだいいが、ITの専門性が一応ある情報システム部長から昇格することが多い情報システム担当役員Bには全社的な戦略性や変革力が物足りないことも多い。さらに、IT専門性もマネジメントの専門性もない情報システム担当役員Cだろうなと思う人も少なくないが、この場合仕事をしないこと(出来ないこと)が、かえって現場は仕事の自由度が上がって、悪くない状況も生まれる。

 このような状況を打破するためには一般企業のトップが、こうした状況を正しく理解しCIOを正しい処遇で招聘するということが第一だろう。CIO探しや招聘を人事担当役員に任せているようでは優秀な人材は移籍してこない。

 このとき、CIO人材をどのように評価すべきかということとCIO人材の社会全体での育成をどうするか、マネジメントの専門性については別に書こうと思うが、ネット系企業やSIerから、これはと思う人材を招聘する場合、少なくとも前職年収の2倍程度は提示する必要があると思う。なぜならそうした人材は既に現職で充分な評価と待遇を得ており、同じくらいの待遇でリスクを負って移籍する動機がない。例えば50歳前後のバリバリのCIO人材が移籍する場合、60歳くらいまでの想定累積収入を3-5年程度で確保できるようなリスクヘッジができる待遇を用意すべきだろう。もしそれが役員の横並びで出来ないということであれば、その時点で人材獲得競争に負けていることになる。

 CIOの経営上の重要性はこれからますます高まると思うが、そうした変革をトップが主導できるかどうかが、企業の将来を左右するのではないだろうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です