ネットが繋がればどこでも仕事が出来る?

 最近は、新型コロナによるテレワークの普及もあって、ネットが繋がりさえすればどこでも仕事が出来る!から、もっと自由に住む場所を選んで、旅をするように暮らそう、みたいな話も多い。しかし、ネットが繋がればどこでも仕事が出来る、とは個人的には全く思わない。本当にネットが繋がりさえすればどこでも仕事が出来るのだろうか。

 私自身は、テレワークしているし、会社でも自宅でも同じように仕事ができるようにはなっている。しかし、それはネットさえ繋がればどこでも仕事が出来る、ということとは全然違う。

 仕事柄、論文を書いたり、講演資料を作ったり、社内説明用の資料を作ったり、寄稿を書いたりすることは多いが、何かを書く、という作業は、WordやPowerPointのような単純に1つのアプリケーションを起動していればいいというわけではない。分析結果のExcelを見ながらPowerPointを操作したり、stataのような統計ソフトの結果をExcelにcopy&pasteしたりといった作業も多く、そのためにノートパソコンには2Kの外部モニターを2台接続し、キーボードとマウスも使っている。そうしたパソコンの周辺機器を会社と自宅とで全く同じセットを用意しているから、会社でも自宅でも同じように仕事ができるのであって、ネットが繋がるからどこでも仕事ができるというわけでは全く無い。ZOOM等で会議を行うにしても、共有している画面と参加者画面、チャットなどを同時に見るには外部モニターの効果は非常に大きい。さらに、本やマニュアルや論文等を完全にデジタル化することはとてもできないから、紙の資料を持ち歩くことも多いし、一部の書籍は会社と自宅の両方にある。

 もちろん、たまにはカフェなどで仕事をすることもあるが、そのときはメールのチェックや簡単なメモ作成程度で、本格的なデータ分析や資料作成は全く行わない。外部モニター等が無い環境では、そうした込み入った仕事をする気力が全くわかない。

 知り合いの大学教員や研究者に聞いてみても(実際に研究室を拝見してみても)、ほとんどの人は大型のモニターを使っていて、カフェで仕事ができるという話を聞いたこともない。ITエンジニアにしても、知っている範囲では、セキュリティの関係もあるにしても、緊急事態以外でネットさえ繋がっていれば仕事ができるという人に会ったことはない。

 そして、外部モニターや資料等の物理的制約が、フリーアドレスやワーケーションの大きな制約条件になる可能性があると思う。フリーアドレスに外部モニターを全部揃えるのは大変だし、直接さわるキーボードを共有するのは生理的に抵抗がある。外部モニターとキーボードと資料を携えてワーケーションというのも、とても大変な気がする。

 思うに、ネットが繋がればどこでも仕事が出来る、というのは、厳しい言い方をすれば、ネットが繋がるだけで出来る仕事しかしていない、ということではないのだろうか。文献も参照せずネットで見れる資料だけを基に文章を書く、メールやslackに書き込むだけで自分では手を動かさず、管理だけをやるといった仕事なら、ネットとノーパソがあれば確かに仕事ができるかもしれない。 もしかしたら、ネットが繋がればノーパソだけで仕事ができる、というひとは外部モニターの劇的な生産性向上の効果を知らないか、ノーパソの狭い画面でストレスなく仕事ができる特殊な能力をもっているのだろうか。 そうかもしれないが、私個人としては、ネットが繋がればどこでも仕事ができるという人を信用する気になれないのは、時代遅れなんだろうか。

 

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