都市の住環境は恵まれていないのか

 2020.7.26の日経新聞の記事「出生率には映らない少子化 再下位の東京だけ子供増加」はなかなか良い所を突いているなと思った。

 出生率に焦点を当てると東京の出生率は最低だが、出生数でみると増加している、逆に地方では出生率が上昇しているところもあるが、出生数でみると減少している、という数値のとらえ方によって見方の符号が逆転するというユニークな視点を提供しているからである。

 もっともこのことは、以前から指摘されていることであり、東京都の出生率が低いのは、東京都で出会ったカップルが子供の生むときに神奈川県・埼玉県・千葉県に移動してしまうためであり、東京都の役割は出生数をもたらす出会いなのだ、というとても面白い指摘もある(しかし、これはきちんとした学術的根拠のある指摘で下記報告を参照)

日本経済センター(2015.7)老いる都市、「選べる老後」で備えを -地方創生と少子化、議論分けよ 「大都市研究会」報告  第4章 東京は「日本の結婚」に貢献―人口分散は過剰介入―日本大学経済学部教授中川雅之

 この記事は全体としては良く書けていると思うのだが、最期の部分の表現が気になった。「住環境などが恵まれているとはいいがたい首都に人口に集中し」という部分である。この表現は「大都市の住環境は地方よりも劣悪である」という前提を置いているように思えるわけだが、本当にそうなのだろうか。

 私の論文 「住まいが主観的幸福度に与える影響」では、住環境(居住満足度)を地域と建物に分けて分析しているが、住環境(居住環境)の2/3は地域満足度が占めることが分かっている。そして、最新の論文 「居住満足度の構成因子と地域差の実証分析」 では、地域満足度には、生活利便性・行政サービス・親しみやすさ・交通利便性・イメージ・静かさ治安・物価家賃・自然観光という8因子が有り、自然観光・行政サービス・物価家賃の影響はあまりないことが分かっている。

 そして、住環境(居住満足度)を地域別に集計してみると、大都市圏の評価が地方都市よりも圧倒的に高いことも分かっている。さらに人口20万人未満の自治体では「親しみやすさ」の評価が極端に低く、地域の濃密なコミュニティが必ずしも評価されていないことが示されている。

 日経の記事では、一極集中を是正するために、地方の「子育て世代の女性が暮らしやすい環境をいかに整えるか」が問題だと指摘しているが、若いひとにとっては「都会のほうが生活利便性等も含めた住環境が良く」「仕事もあり」「楽しい」から一極集中が進むのではないだろうか。こうしたシンプルな理由であるなら、一極集中の是正はかなり難しい。なにより私自身もそう思って都会に出てきたのだから。

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